オーディオ解体新書>KENWOOD DP-1100SG

 

DP-1100SG

最終更新日  2006年4月8日

440W×124H×360Dmm  11.8キロ

1987年発売 89800円

品番で言うと前作 DP-1100Dの後継モデルであるが 内容は大きく異なる。


写真右下にあるのがマスタークロックで、スポンジで包まれている。
ジッター対策のため、DACの近くに配置されている。

KP-1100というADプレーヤーがあるが それと同じように制振・防振にかなりコストを裂いた製品。インシュレーターはバネヨット式でサスペンションと呼ぶべき構造をしている。コイルスプリングとエアサスペンションを組み合わせたもので、ストラットエアサスペンションと呼ばれていた。2万円安いDP-990SGにもこれはそのまま採用されている。DP-990SGもハイCP機としてバカ売れした。


脚は一個160gある。


底板は 2ミリ厚



天板などはコストの兼ね合いでCDP-555ESDのような分厚い板材は使用できないが 材質の異なる鉄板を張り合わせて鳴きを抑えている。2120gある



ピックアップはアルミダイカスト製のベースにマウントされている。
(ケンウッドのオリジナルパーツ)
単なるアルミではなく防振金属らしい


こういったちょっとした部分にも制振材が貼られている。

メカニズムは2ミリの鋼板の上に設置されている。



トランスはケースに入れられてメカの後方にマウント。この価格帯でケースにトランスを封入するというのはあまり無い。デジタル・アナログ別の2トランスである。
ケースのサイズは73×61×53 電源容量は15.5VAと12VA


基板はよくあるタイプでガラスエポキシではない。デジタルアナログ分離基板。デジタル系はシャシーに直接固定されているがアナログ系は中2階に設置されている。

通常基盤を2階建てにすると、2階部分の基盤の取り付けは不完全なものになりやすい。本機では2階部分の基盤にも、シールドをかねた鉄板を設置し、その鉄板の上にフローティングされた状態でアナログ系基板が設置されている。

フローティングされているので押すとふわふわ移動する。シールドをかねた鉄板は前後シャシーと側面・底板と合計9箇所でねじ止めされてシャシー全体の補強もかねている。またこういった鉄板にも制振材が細かく張り込まれており、手が混んでいる。





アナログ基板をフローティングしているパーツ
PCBインシュレーターと呼ばれていた。


デジタル基板(右側)
デジタル系電源・ボリュームなどの基板(左側)

アナログ系基板はセラファインやDUOREXといった高級パーツは無いが FOR audioのパーツで手堅くまとめられている。銅箔コンデンサーがやたら多用されているのが目に付く。以前KENWOODのKA-990Vというアンプ(これもハイCP機として有名)を分解した事があったが、これにも銅箔コンデンサーが多用されていた。KENWOODの技術者は銅箔コンデンサーが好きなのか??


DACはバーブラウンPCM-56P の K ランクを2個搭載している。

この機種で特徴的なのは、PCM-56の横に可変ボリウムを装着している。これはDACの個体差をマニュアルで一々調整して出荷するためで、非常に工場泣かせの仕様だったらしい。具体的にはマルチビットDACの一番大きな最大のビット(MSB)とその半分の大きさにあたるビット(2SB)を適正な抵抗値にマニュアルで出荷時に調節していたようです。あまりにも面倒な為か その後の機種ではこの調節作業はなくなりました。マルチビットゆえの作業で現在主流の1ビットタイプのDACでは必要無い作業ですね。

上の写真のした方少し見えているのがマスタークロックで スポンジでダンプされている。もっともこのスポンジはウレタンで経年変化で触るとボロボロになっていた。既にジッターの影響について着目し、DAC近くにマスタークロックを配置して、外部から飛び込んでくるリップルや伝送時に発生するジッターを排除しようとしている。


アナログ系の電源回路
ELNAのオーディオ用コンデンサーが使用されている。

アナログ基板の下にはモーターで駆動されるボリュームがあり、リモコンで音量の調節ができました。


出力は デジタル(同軸・光)とアナログ(固定・可変)

1988年1月号の雑誌STEREOの”一般的にお勧めしたいベストワンはこれだ!”という企画で長岡鉄男氏は本モデルを選出し以下の様なコメントを残されています。

この価格帯としては大型重力級、実測12.3キロはナンバーワンではないにしてもナンバーツーは間違いない。そして音はナンバーワンだ。奇をてらったところはない。基本に忠実な設計である。高剛性重量級のキャビネットを、優れたインシュレーションシステムで浮かせる。アルミダイカストのベース、フローティングさせて振動の影響を遮断したアナログ基板。デジタル・アナログ独立の電源トランス。すべて正攻法である。回路は4倍オーバーサンプリング、16ビット2DACとオーソドックス。機能面もこのクラスの標準装備。出力はアナログが固定と可変。デジタルが光と同軸の合計4系統。可変出力も意外と音がよく実用になる。なんといってもリモコンでボリュームが調節できるのが便利。ワイドレンジ・高分解能・明るく繊細でシャープに切れ込むサウンドと広い音場は10万円台でも通用するものだ。

また別のある質問欄のコメントでは
少し前のベストハイCP機だった高級モデルDP-2000(1985年発売;149800円)を <完全に追い抜いている>とコメントされています。

FMファン誌のダイナミックテストでは同氏は以下のようなコメントを残しています。
メカ・DAC・脚など多くの部分がDP-990SGと共通であるが、音はかなり違う。DP-990SGもハイCPであったが、本機は更にハイCPである。89800円の音ではない。レンジが広く情報料が多く、厚み、力強さ、もあるが、透明感、細部の切れ込みという点で傑出しており、繊細で鮮明。音場ものびのびと広がり、いかにも明るく、空気の澄んている音場という感じになる。18万円クラスと比較すると超低音のゆとりとか厚みで差がつくが、中高音の透明、鮮明、繊細な表現は負けていない。
(1987年ダイナミックテスト大賞部門賞)

1992年秋号のオーディオアクセサリー誌では、昔のCD-Pを集めて、現代のCD-Pと音を比較するという企画があり、DP-1100SGも昔の機種として参戦しており、長岡鉄男氏は以下のようにコメントされています。
当時ハイCP機として評価の高かったモデル。89800円で実測12.3キロというのは他には無かった。今でもこれを上回るのはSONYのCDP-555ESAぐらいである。強靱なキャビネット、大型ダイカストベース、板バネ式(注;実際はコイルスプリングとエアサスペンションである)の大型インシュレーター、ACコードも1.25平方ミリのキャブタイヤと手抜きが全くない。鮮明、透明で、粒立ちの良いサウンド、見通しのよい音場が印象的であった。今回(製造後5年経過した中古機)のヒアリングでは、やや高音よりのバランスに聴こえた。重低音・超低音がちょっと軽く、柔らかくなる。オルガンは芯があるがやや細身、ブラス、ボーカルも芯があるがやや細身になる。オケは軽快、繊細で分解能はあるが、ハイエンドがややメタリックで厚み、豊かさがもう一つ。音場は見通しがよいが、広大というほどではない。

また最後に実際に古いCDプレーヤーをいくつか試聴した後に以下のようなコメントも残されています。
古いプレーヤーを聴いて感じたことは、クオリティーは確かに向上している。しかしあっと驚くほどほどではない。超マニアならともかく、普通の人だったら十分許せるほどの差ではないだろうかということ。(中略)10年間CDを聴いてきて、着実に音は進歩している。ついにADに追いつき、追い越せたと思ったことも何度かある。そんなときに何気なくADを取り出して聴いてみるとハッとする。やっぱりADの方が音が良い。いつになったら本当にADを追い越すことが出来るのだろうか?人間の耳には慣れがある。同じ音を聴いていると、だんだんいやになってくるのも慣れだが、だんだん良く聴こえてくるのも慣れた。CDには後者の慣れがあるようだ。僕自身CDの音に慣れて、もうADはいらない、捨ててしまおう、という気に何度かなったことがある。住めば都という言葉があるが、聴けばCDなのではないか?当然次は聴けばMD 聴けばDCCということになる。

 

音はこちらを参照

長岡氏以外の評論家のコメントは1988年5月のステレオ誌に掲載されています。
石田善之氏
一言で言うと大変きめの細やかな、しっとりした美しさを持つ音で、上品さが特徴である。必要以上に輪郭を強調するようなところがなく、ごくさりげなく聴かせるため、力や迫力に乏しい印象になるが、実のところレンジは十分に伸びている。特に音場情報はしっかり出てきてオケの木管空間に溶け合うような部分や、声楽と伴奏ピアノの距離感、あるいは空間でまじりあう様子がとても美しい。ピアノも荒い感じがなく、あくまで正確で、それでいて弱弱しさがない。音の重なった響きが厚く、ピアニッシモとフォルテッシモの差がクリアに出てくる。特にピアニッシモの音色は美しい。オルガンとコントラバスの曲はもう少しスケール感や幅、堂々とした鳴りっぷりの良さがあっても良いか、と思うくらいトロリとした滑らかさがある。音場の出来方は前にせり出してくるのではなく、奥へ引っ込んでいって、総合的にS/N比が優れているために、細かい情報を良く伝えられているのだろう。ジャスはもう少し迫力があっても良いだろう。ベースは少し軽い感じがあるものの、あくまでも透明である。全体のスケール的にはやや小さめ。

金子英男氏
すっきり伸びたFレンジのワイドな感覚と解像力の高い透明感がある。こくはあまり得られないが、鈍感さは全くなく、さらりとした清潔感があり軽快な良さを持っている。決して浮ついた感じになる事も無く、ある種の誠実感を感じさせるが、やや薄めの感じになってしまうところがある。しかし妙なこだわりのないスムーズな鳴り方で、適度な明るさを感じさせすっきりした潔さを持っている。

福田雅光氏
サウンドパターンは明るくフレッシュでピュア。ニュートラルで適度なメリハリで結ばれ、立ち上がり、サウンドの切れが良いために、きわめてすっきりし、明瞭で鮮度の高い生き生きした展開になっている。解像度も高くて見事。音もしまりも良い。低域のエネルギー感も高域とバランス良くキープされ、圧倒的な馬力というよりも腰の強いスピーディなactionを引き出す躍動豊かなタイプ。

1988年春のオーディオアクセサリー誌
貝山知弘氏
クリアで癖の無いサウンドという印象で、このクラスの中では丹誠名な音楽表現が可能な点を評価したい。低域はローエンドこそ薄いが適度に延びており、高域もごくわずかにアクセントもあるが素直に延びており、音が突っ張ることは無い。音像の粒子が細かく、演奏の細部のニュアンスをかなり細かく表現してくれる。弦の倍音はやや大目、音色は少しドライな方向で金管楽器は音像がきりっと締まりクリアに響く。

石田善之氏
のびのびとした音で硬さが無い。密度を感じる。ローエンドも誇張が無くて自然な感じだ。弦のビブラートがよく伝わり、上品かつスムーズだ。全域にわたって深さや透明感がある。低音〜高音の統一がよく、弱音が美しい。明確で定位や距離感が自然に出てくる。トランペットの質感の高さがよく出て歪っぽさが全くない。

オーディオ解体新書>KENWOOD DP-1100SG